Chapter 1
小さな水力発電がもたらす売電利益は
地域の維持や活性化の大きな一手になる。
時代と共に
課題よりメリットのほうが
多くなってきた。
「地域小水力発電はカーボンニュートラルに応えるクリーンな発電です。太陽光発電や風力発電に比べて川の流れは安定しているため安定して発電できます。また、山から海へ水が流れる日本の地形に適しています。さらに固定価格買取制度の対象となる再生可能エネルギーなので、売電単価が34円/kWhと比較的高い水準が維持されています」と上坂教授は主なメリットを挙げてくださいます。では課題には何があるのでしょう?「まずは建設コスト。建設コストが数千万円、数億円になるので、太陽光発電のように手軽にとはいきません。地域の電力をまかなうといってもその資金をどうするか、地域の合意を得ることが難しくなります」。各地の地域小水力発電は、資金力のある企業が主体となって投資・建設し、資金回収をしながら徐々に地域の所有に転換していくスキームや、地域の住民の出資によって実現したケースなど、さまざまな方法で実現しています。課題は他にも河川の水や漁業の利権問題もあるといいます。それでもなお、地域小水力発電が注目を集めているのはどうしてなのでしょう?「小さな発電ですが、地域にとっては発電だけでなく、売電による利益が地域の活性化の一助になるからです」と上坂教授は言います。
アルプスから流れ出る川の水が、網の目のような大小の水路となってめぐっている。
その水路の一つ、町川用水を利用しているのが大町の小水力発電所。