Chapter 2

無理なく、自然と暮らす
それができる未来が
そこまできている

Society5.0のキーは、
山水郷にある

都会は生きにくいので田舎へ帰ろう。井上さんは、その昔ながらの考えを否定します。交通と情報の環境が進化し、働き方もどんどん変わっています。都会か、田舎かの二者択一ではなく、どちらのいいところも取り入れる両者選択ができる時代になったのです。「日本政府は『超スマート社会』として『サイバー空間(仮想空間)』と『フィジカル空間(現実空間)』を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことを『Society5.0』と名付けました。交通と情報化が進化し、都会でなくても経済活動ができるようになることで、山水郷はその始まりの場所となることができると考えています」と井上さんは言います。

テクノロジーの進化が山水郷の
追い風になる。

そして進化するテクノロジーが山水郷の暮らしを快適にすると井上さんは指摘します。「山水郷の暮らしはおいしい水と食材に恵まれていますが、上手く収穫するには熟練の手作業が必要でした。これをロボット、自動化技術、AIなどの活用で身近なものにできます。エネルギーは太陽光・風力・バイオマスを活用可能。自動運転の技術の精度が上がれば、運転手不在で不便を極めていた高齢者や子どもたちの移動も容易になります。医療や教育はネット環境下での遠隔診療やオンライン授業になりますが、5Gなど通信の高速化・大容量化で距離を感じさせないサービスが実現されるでしょう。これまでの不便や不都合が解消され、生活に必要なもののほとんどは地元で調達でき、いろいろなことが自動化されて余計なコストと手間が省ける生活が実現するのです。都会で暮らすストレスを軽減し、自然と共に生きる人間本来の生活に近づく。回帰ではなく、元気になる場所としての山水郷。テクノロジーの進化がその追い風になるのは間違いありません。その考えに共鳴する人だけでなく、実践している人もどんどん増えています」。人を元気にする、新しい暮らしの始まりの場としての山水郷。新しい社会の物語はここから始まるのかもしれません。

井上 岳一

株式会社日本総合研究所、創発戦略センターシニアスペシャリスト。人口減少時代を生きのびるための地域社会のデザインの研究・実践や、コミュニティと共創する「コミュニティアプローチ」による問題解決を専門に多彩な分野で活躍。「内閣府規制改革推進会議専門委員」「南相馬市復興アドバイザー」も務める。

MizuMirai Vol.06

Special Feature特集①

そして、46億年。

水と地球の
現在、過去、未来。

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